ノーマライゼーションについて ― 精神保健福祉士の立場から

2019.03.12

 前回のスタッフコラムでは、当院院長の青山よりノーマライゼーションについて話がありました。今回のスタッフコラムでは、精神保健福祉士という立場から、精神障害を持つ方のノーマライゼーションについてお話しさせていただけたらと思います。

 ノーマライゼーションとは、「障害のあるなしにかかわらず、人間としてごく普通の健康的な生活を送れるような社会を作っていくこと」であり、つまりは障害を持つ方の住居や教育、労働、余暇の条件をノーマルにすることで、障害のない人と同じ生活条件を作り出すことを言います。例えば、車椅子やスロープ、エレベーターは、足の不自由な方が他の人と同じように好きな場所、必要な場所に行けるように活用するものです。このように道具や環境を整備しノーマルな生活を送れるようにするということがノーマライゼーションであるということです。

 それでは、精神障害の場合はどのような形のノーマライゼーションがありうるでしょうか。例えば当院のメディカルサポートセンターには、中立的な存在として私たち精神保健福祉士がいます。私たちを患者さんが持つ社会資源(ニーズを充足するために動員される物的・人的な資源のこと)の一つとして考えていただくことができます。話したい内容を主治医に伝えることが難しければ、私たちと「相談の仕方」を相談したり、事前に主治医に伝えたい内容を私たちがお伺いしたりとすることもできます。また、障害があるために思うように日常生活を送れない、働くことが難しい、金銭的に困窮しているけれど誰にどう相談すれば分からないという時は、私たちが社会福祉制度、医療制度、その他地域の社会資源に関して情報の窓口となり、お伝えすることができます。社会資源をその方にとって好ましい在り方で調整することで、障害の特性によって阻まれてきたその方らしい生活の実現をサポートいたします。これらサポート自体が、治療アイテムの一つとして、ノーマライゼーションとなりうるものと考えております。

 精神障害の障害特性は身体障害に比べると目に見えないものが多く、できないことや苦手なこと=「やる気がない」と言われることも少なくありません。しかし、障害の特性としてあるものを見極め、自身で出来ることは身につけながら、様々な制度や周囲の人を活用しながら生活を送っていくことが、その人のWell-beingに繋がっていきます。

 当院では、一人ひとりの悩みごとや困りごとに寄り添いながら向き合い、症状消失だけではなく、その先にあるWell-being(健康的で良い状態)を目指すことが重要であると考えています。その中でこのノーマライゼーションという考え方を重視しております。どのような相談でも何かございましたら、主治医や私たちメディカルサポートセンター所属の精神保健福祉士にお気軽にお声かけください。

メディカルサポートセンター 精神保健福祉士 中村亮太