「目指すべき地域生活とリンクスメンタルクリニック」~臨床心理士の立場から~

2020.07.14

 今回のテーマにある“目指すべき地域生活”とは、みなさんが地域の中でよりよい生活を送っていただくために当院スタッフが“目指すべき”理念・目標のことだと思います。“地域生活”を心理士の立場から考える時、みなさんには上記のような“すべき”ではなく、“~したい”“~でありたい”という欲求を大切にし、一人ひとりの満足のいく生活の実現(=よりよく生きるwell-beingの達成)を目指していただきたいと考えます。とはいえ、“どのような地域生活を目指しますか?”といきなり尋ねられたとしたら、みなさんはパッと自分が望むようなあり方を思い描いたり、口にしたりすることができるでしょうか?

 思い描くこと、堂々と述べることが出来る方がいらっしゃる一方で、思い浮かぶことはあるけれどもなんだかしっくり来なかったり、実現に向けては中々動き出そうと思えなかったりする方、あるいは自由に思い描くこと自体を難しいと感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。そう感じる時の多くは、どういう生活を目指したいのか、どういった生活が望ましいのか、実現させられる可能性はあるのか等々、公私にわたる様々な制約や限界に心のもつ自由が制限され、自分がどうありたいのかという欲求がないがしろにされていたり、生じにくくなっていたりすることが考えられます。

 地域生活に限らず、生きていく上では、自分以外の多くの人達との関わりが生じます。様々なルールや制約は他者との交流を円滑に行っていくためにも必要なものであり、生活を営んでいく上でそれらを無視するわけにはいきません。だからといって、ルールや制約ばかりを意識していたら、自分の中にある“~したい”“~でありたい”といった欲求は見えづらくなり、満足のいく生活からは遠ざかってしまいます。この “自分自身の欲求を大事にしたい、でも、現実には無視できない事柄はたくさんある”という状態に一人で立ち向かうことは大変骨の折れる作業です。だからこそ、みなさんと当院スタッフとのコラボレーションがこの状態を乗り越える1つの方法になるのではないかと考えます。

 当院で実施している「よろず相談」では、様々な要因によって不自由さを抱えた心を解きほぐしながら、見えづらくなっている各々のもつ欲求を見つけるお手伝いをしております。それぞれのwell-beingの達成には、“~したい”といった欲求は欠かせない要素ととらえ、自らの欲求を大切にし、充実した日々を共に目指していけたらと考えています。

 当院ご利用の方であれば、どなたでも「よろず相談」をご利用いただけます。ぜひ、ご活用ください。

臨床心理士 横澤 希美