治療アイテムとしてのノーマライゼーション

2019.01.30

ノーマライゼーション(normalization)とは、「障害者と健常者とが、お互い特別に区別されることなく社会生活を共にするのが正常なことで、本来の望ましい姿」を言い、デンマークの知的障害者施設担当者である、ニルス・エリク・バンク=ミケルセンと障害者を持つ家族の運動によって、「1959年法」という法律に初めて盛り込まれました。そしてその概念が、1960年代以降北欧諸国やアメリカなどに広がっていきました。日本においても、1996年の厚生白書で「障害のあるなしにかかわらず、地域において、ごく普通の生活をしていけるような社会を作っていくこと、障害者・高齢者など、誰もが地域・社会から差別・排除されない社会、共に生きていける社会」つまり、共生社会を挙げています。ですが、共生社会、障害の有無に関わらず、健康的な生活をしていけるように工夫していくことが重要です。
精神障害自体も普通の生活を送ることを必ずしも妨げるものではありません。そもそも人の脳は容易にうつや幻覚を引き起こします。条件がそろえば、誰でも妄想的な考えを持ったり、極端に強迫的な思考になったりするものです。こういった症状は人間の正常な反応の一部として起こるもので、どんな人でも起こりうるものです。障害のあるなしにかかわらず、人間として、当たり前にノーマルであるということ、ごく普通の健康的な生活を送ることが大切なのです。
当コラムでも過去に挙げていますが、当法人はWell-being(健康的で良い状態)を目指すことを理念としております。「健康」とは、最低限度の生活保障だけでなく、人間的に豊かな生活が実現されること、身体的・精神的・社会的に良好で個人の権利や自己実現が保障された状態のことを言います。1948年の設立における世界保健機関憲章の前文においても、「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」ということが「健康」であることと定義されています。
我々の精神科機能リハビリテーションでは様々な治療アイテムを準備しております。その治療アイテムは、ノーマライゼーションの考えのもと、障害のあるなしにかかわらず、すべての人が対象となり得るものとして行われております。どんな人も、時には悩みを持つことがあると思います。治療アイテムを通じて、その悩みを解決することが出来れば、生活をより健康的なものにすること、Well-Beingを得ることに繋がります。すべての人にはもちろん治療スタッフも含まれます。治療アイテムを通じて、スタッフは多くのことも学び、それがスタッフの生活自体に良い影響を及ぼします。
メンタルケアにおいて、ノーマライゼーションの考えに基づいた治療アイテムは、障害者の枠組みを越え、どのような悩みも対応しうるものであり、そして誰しもが享受しうるものであります。皆さんと健康な生活を得るために共に歩んでいければと考えております。

リンクスメンタルクリニック 院長 青山 洋