皆さんにとっての「心のかかりつけ医療機関」に ~メディカルサポートセンターより~

2021.06.01

 前回のスタッフコラムでは、院長から「地域に一番近い精神科」を目指すと新年度の抱負を掲げさせていただきました。では「地域に近い」とはどういう意味でしょうか。例えば、当院は中川駅の目の前にありますから、そうしたアクセス性の良さでしょうか。もちろんそれもありますが、私たちが掲げる「地域に一番近い精神科」はそれ以上のテーマを含んでおります。今回はメディカルサポートセンターの立場から、「地域に一番近い精神科」というテーマで書いていこうと思います。

 結論から申しますと、「地域に一番近い精神科」を目指すということは、何でも相談することのできる「心のかかりつけ医療機関」を目指すことだと考えております。私たちは、精神科医療の役割とは薬を処方し症状の消失を目指すだけではなく、日常生活と社会生活におけるリカバリー、そしてその先にあるWell-beingを目指すことであり、皆さんの思いや希望を大切にし、より良い人生に向かって歩んでいけるよう治療、支援をしていくことであると考えております。そうしたことを考えていくためには、話していく内容は精神症状や身体症状、薬に限りません。日々のちょっとした悩み、家族や友人との関係、夫婦関係、職場での人間関係や働き方、その他精神医学的問題を超えた人生の困りごとなど多岐にわたります。「こんなことを相談しても良いのだろうか」と思うことでも、お気軽に相談していただけたらと思います。

 さて、そうした医療機関を目指していくことに対して、今回スタッフコラムを書く上で、当院に通院されている方々はどのような気持ちで通院されているのか改めて考えておりました。現代日本においてはまだまだ精神科は受診のハードルが高い診療科ではないかと考えています。昔より偏見や差別は薄れてきているとはいえ、やはり偏見は存在しておりますし、皆さんも受診するときには程度の差はあれ、抵抗感があったのではないでしょうか。それ以外にも「精神科は初診の予約が取りにくいと聞いたことがある」「冷たい対応をされるのではないか」といった心配や、医師に対しての「どんな診断や治療をされるのだろう」「甘えているだけと言われないか」といった心配、あるいは「周囲の人に知られたらどうしよう」「知っている人に見られたら・・・」といった心配をされる方も少なくないのではないでしょうか。

 今回は皆さんが受診しやすい、相談しやすいと思って頂けるように、当院が行っていることを少しご紹介して、スタッフコラムを終わりたいと思います。まず、受診のハードルについてです。当院では受診を決意されてからすぐに初診で来ていただけるように、毎週9枠ほど初診の枠をご用意しております。時によって、曜日によって混み具合が異なりますがお気軽に問い合わせください。また医療機関においても接遇が重要であると考え、接遇研修を行い、安心して相談しに来ていただけるように丁寧に応対することを心がけたりしております。なお、初診予約の際からソーシャルワーカーがお話を伺い、ご予約をお取りしております。次に治療については、精神科では病態が概念的であり他の診療科のように画像検査や数値によって診断をすることができません。心理検査やそのほかの検査を行うこともありますが、基本的にはお話を伺う中で診断と治療を進めていくことになります。そこで、初診の際には皆さんが悩んでいることをより良く理解し、きちんとした診断と治療ができるよう診察の前にソーシャルワーカーが30分程度お話を伺っております。また、治療方針や内容についてはソーシャルワーカーが所属するメディカルサポートセンターが皆さんに適切な医療が提供されているかを見守る機能を持っており、院内で治療方針や内容について適宜検討しております。さらに当院の医師、スタッフは白衣を着ず、相談しやすい雰囲気づくりを心がけております。最後に「周囲の人に知られたら・・・」という点では、個人情報保護に細心の注意を払うことはもちろんのこと、当院は企業や飲食店、歯科クリニックなどが入っている中川センタービルの3階にあるため、周囲を気にされることなく受診いただける環境なのかなとも思っております。

 このような初診のハードルを下げ、相談しやすい雰囲気や環境づくりを構築していくとともに、日々の治療についても同様に皆さんの様々な悩みに応えることが出来るよう整えております。それらについては今後、デイケアのスタッフや臨床心理士、薬剤師など他の部門の担当者がコラムを書いていきますので、その中でご紹介があるかもしれません。困ったときにいつでも相談しに来ることのできる「心のかかりつけ医療機関」を目指していきますので、よろしくお願いいたします。

精神保健福祉士 中村 亮太